1. 為政第二(031)N

為政第二(031)論語ノート

子曰。学而不思。則罔。思而不学。則殆。

子曰く。学んで思わず。すなわち罔(くら)し。思いて学ばず。すなわち殆(あやう)し。

学んで思わないことの暗さとは、学んだ知識というものが、現実社会の断片を脳内に模写した結果物であるとして、その脳内に蓄積された断片が現実社会においては、その他の断片との相互連関の中にあるものであり、そうした相互連関のものとして、脳内でも構成しなければ生きた知識とならないことを表す。つまり思うという過程、そして学問という過程を経て知識をより現実社会の存在形態に近づけていく必要があるということを表す。それは別にそうしなければならないという義務ではないものの、生きるために学ぶ上では現実社会で役立つことが求められることになる。

思って学ばないことの危うさとは、思うことの材料は脳内にある知識の総和であり、知識の総和を多くしなければ思う広さに制限が伴うことを表す。また学ぶとは、先人が苦労して悩み、身に付けたものを教えてもらうことを意味する。教えてもらうことは悩むことの省力化であり、人間を人類の到達点の高みに導くものである。そのことは論語の新研究において宮崎市定先生が指摘されている。