1. 札勘定

札勘定

札勘定は略して札勘という。札勘定とは、お札を勘定することではない。その言葉は、受け取り側が、その有り高に対して責任を負うという動作を表している。札勘定は、お札を勘定することでもあり、お札を鑑定することでもある。お金の受け渡し時には必ずお金を数える。日本銀行の蔵出しの帯封紙幣であっても必ず全数を数える。それは受け取る者が、その有り高に対して責任を負うためである。渡した相手が家に帰ってお金を数えたら1枚不足していたと述べたとする。そのとき、自分が札勘定を行っていれば、自分の責任において、「残高を確認してお渡ししました」と言い切ることができる。それは日本銀行蔵出しの紙幣に対しても同じこと。「いや日本銀行の帯封紙幣なので数えていません。」と述べたとする。それなら、いま苦情を述べている相手のことは信じられないが、日本銀行のことは信じられると答えたことになる。そうではない。責任を負うのは自分自身であって、日本銀行云々は関係ない。だからすべての責任を引き受けるためには、お金を数える必要がある。それが札勘定である。お金を数える機会は日々訪れる。そのとき、相手が数えたお札をもう一度数えてから財布にしまうのが常識といえる。それは間違いを防ぐためであり、自ら責任を引き受けるためである。それは相手を守ることである。相手を守る行為が、疑い深い人だなどと思われるのだとすれば、それは全くあたらないというべきだろう。