1. 土のにおいと入浴

土のにおいと入浴

冬になると入浴しても体を洗うことがおっくうになることがある。頭を洗わなければかゆみが出るのでせめて頭を洗おうと思うが、寒さゆえに体を洗うことを後回しにすることもある。しかし、一人暮らしの方や、ご高齢の方と対面でお話しする機会があるときにまれに土のようなにおいを感じることがあった。入院して数日間入浴できていないという方とお話ししたときにも同じにおいを感じた。それはおそらく加齢臭とも表現されるものだが、入浴回数や入浴時の洗髪や体を洗う頻度が落ちることが原因ではないだろうか。入浴の頻度が落ちることがそうした土のにおいの原因となっているのだと思う。駅の階段を降りているときに吹き上げる風にのって自分の頭皮のにおいを感じることもある。頭は二度洗いしなければ十分に油分を洗い流せないためと思われる。川底の砂や電車のレール、階段の手すりや頻繁に開け閉めされるドアのノブ、神社の境内の置物など、頻繁に外的な接触を受けるものは光を放ち、磨かれている。特別なことではなく日常の生活にもまれることで人も磨かれる。布団の上げ下ろしや部屋の掃除が筋肉の衰えを防ぐのと同様、社会生活のなかで自分を磨く感覚を保ちたいと思う。