1. 憲問第十四(364)N

憲問第十四(364)論語ノート

子曰。不患人之不己知。患己無能也。

子曰く。人の己を知らざるを患(うれ)えず。己の能くする無きを患うなり。

孔子が言うには。人に認めてもらえないことを嘆くのではなく、自分が良くできないことを嘆くべきだろう。

本章は学而第一(016)と対になった章です。前半が学而第一(016)と同じであり、後半が異なります。学而第一(016)では、「患不知人也。」人を知らざるを患うるなり。と続きます。そして本章は「患己無能也。」己の能くする無きを患うなり。とされています。こうして対比してみると、己の能くする無きを患うるなりとは、「自分に能力が欠けていることを嘆くべきだ。」という意味です。あなたは、他の人があなたよりも優れていることを知らないから、自分が認められないなどと嘆いているのだという。まさに真正面からの指摘になっています。学而第一(016)は婉曲に。憲問第十四(364)は率直に。恐らく、これが書きとめられた場面は同じで、別々の弟子が別々に記録した。一方は婉曲に。もう一方は率直に。しかし両章ともに発憤を促す愛情に満ちている。これは現状の評価であり、人は努力を積み重ねた分だけ成長することができる。