1. 研ぐ

研ぐ

昔、精肉店でアルバイトをしたことがある。その店では毎日、店長が仕事終わりの夕方に包丁を研いでいた。包丁は毎日研ぐものだ。包丁は使えば鈍(なま)る。家でも同じ。包丁は一度使うと切れ味が鈍(にぶ)くなる。

ところで例えば仕事では常に第一線で働かなければ知識が鈍(にぶ)るという。つまり、知識は使うほどに磨かれて、研ぎ澄まされるような印象がある。しかし、包丁は使えば鈍(なま)るのだ。仕事の経験は豊富になるほど研ぎ澄まされる。これは真実だろう。

しかし包丁は使えば鈍(なま)る。包丁の切れ味とは切り分ける鋭さ。人に例えれば処理能力だろう。つまり人において研ぐとは処理能力の回復であり、休息を意味する。心身の疲労を癒し、気持ちを回復させることだ。疲れていると同じ仕事も倍の時間が必要になる。仕事の処理量は時間だけでは計れない。ただ、あせるほど、承認欲求が強いほど、長時間労働を美徳と感じてしまう罠に陥る。

年始に毎日包丁を研いでみようと思い至っている。毎日研ぐと切れ味を回復させるための研ぎ時間が短くて済む。毎日体を休めれば回復も早いはずだ。処理能力を高めるために自分を研ぐ。休むことを自覚してみよう。