1. 冗長の合理性。

冗長の合理性

必要もなく長々しいことが実は理にかなっている場合がある。加算機という電卓で伝票の合計欄を検算しながら加算を行う場合に、一枚目の伝票が三行あり、一行目123+= 二行目456+= 三行目789+=と押すと、ディスプレーには計算結果の1,368が表示される。伝票の合計が1,368に間違いないことを確認して、 M+(メモリー加算)を行う。そして ON/C(クリアボタン)を押す。次に二枚目の伝票の一行目234+= 二行目567+= 三行目678+=と押すと、ディスプレーには計算結果の1,691が表示される。二枚目の伝票の合計が1,691に間違いないことを確認して、M+(メモリー加算)を行う。そしてON/C(クリアボタン)を押す。そこでRMボタンを押すと二回分のメモリー加算の結果である3,059がディスプレイに表示される。ちなみにM+(メモリー加算)を行った後にON/C(クリアボタン)を押すのは、そうしなければその計算結果が次の加算に引き継がれてしまうためだ。

ところが、次の伝票が123という一行だけのものであったとする。一行だけの伝票は検算が必要ないので、123と押した後、+=を押さずに、直接M+(メモリー加算)を行う。この+=を伴わず直接M+(メモリー加算)を押す場合には、計算過程が電卓に記憶されないため、ON/C(クリアボタン)を押す必要がない。+=、+=、+=というふうに加算を経てM+(メモリー加算)を押す場合には、ON/C(クリアボタン)が必要となる。

このように、状況によってはON/C(クリアボタン)が必要となる。ある時にはON/C(クリアボタン)は必要でない。というように結果が異なる場合、押す必要がない時には押さなければよいというのが合理的な判断かもしれない。しかし、流れ作業を行っている時に、この時は押す。この時は押さない。と考えることは、いちいち間に判断が挟まる。余計に脳が疲れてしまう。それならば、むしろ一行だけの直接M+(メモリー加算)の場合にも例外なくON/C(クリアボタン)と押すようにすればよい。

これはON/C(クリアボタン)を押し忘れないようにするために、必要がなくても例外なくON/C(クリアボタン)を押すという冗長な作業といえる。しかしこの冗長な作業を挟むことで、余計な状況判断を省略することができる。より作業を単純化することができる。このように余計なことが作業を単純化させて、結果として信頼性と合理性につながる場合がある。これを冗長の合理性と呼ぶ。