1. 発言

発言

他人に向けて言葉を発すること。脳内に留まっている思考を空気を震わす音として他人の耳を通して他人の脳内に伝達すること。それはその他人の思考に少なからず影響を与えることになる。それは弾丸の軌道のように現時点ではほんの僅かな誤差にも満たない影響かもしれないが、そうして与えた誤差は、その人のこれからの人生において長期的に見れば大きな影響となる可能性を秘めている。例えば会議の中で、どれほどにも取るに足りない発言をしたとしても、それが組織全体の意思決定において大きな意味を持つ可能性もある。それは自分の頭の中だけに留まっていた思考が、他者に伝播することを意味しており、ある意味においては、動物が子孫を残すことにも似て、自身の思考の断片を将来に亘って社会的な文化の一断片として、継承され、伝達されていくものとする可能性もある。それはトンネル掘削現場の最先端のドリルの刃のように、その言葉をもしもいま発しなければ、人類がその思考の可能性を見出すためには、あと100年を待たなければならないことも起こり得る。故に自身で考えたことを言葉に表すことは、自身のためであり、社会全体の役に立つ行為であると考えておけばどうだろうか。いずれにせよ、くだらないことを発言したために、恥ずかしさに身震いして発作に襲われることはよくあるが、そういう恥をかくことさえも、自身を成長させる糧となり、社会を進歩させる糧にもなると考えておけば良いのではないだろうか。恥はかけるときに、かけるだけ、かいておけばよい。